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そうだ赤線跡地、行こう。③ 花街が設立した株式会社


絢爛かつ妖艶な想像をかき立てる”花街”。
芸を売る芸妓は花街、春を売る娼妓は遊郭と区分けされていたが、花街にも少なからず娼妓が存在していた。
不特定多数の客との売春に勤しむ娼妓は”不見転(みずてん)”と呼ばれ侮蔑されていたが、
多額の借金を背負っていた者が多かった花街では不見転は珍しくなかったそうだ。
ここでは戦前の花街の業態や金回りについてちょっとばかり書き記してみたいと思う。

花街の別称 三業地

花街とは、「置屋・待合・料理屋」の三業が集う地域の呼名である。
三業に加え「検番」と呼ばれる業も存在する。
現在でも”三業”の地名を持つ区画が都内にいくつか存在する。
東京平井へ行くことがあれば電柱を見て欲しい。
この地が三業地であった名残を見つけることが出来る。
赤線オタクはこの地名を見つけられると幸せな気持ちになれる。
実にニッチで安上がりな趣味である。
電車代以外に金が掛からないからな!!

 

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以下、三業について簡単に説明したい。

「置屋」
芸妓の所属部屋と言ったところ。あくまで芸妓達を置いておく場である。客を上げることは禁止されていた。
現代に例えるならばデリヘルの待機所のようなものだろう。
三味線や舞踊の稽古をつけていた置屋も存在していた。

 

「待合」
芸妓との遊興に励むための場。客は待合へ足を運び、そこで芸妓と落ち合うことになる。
客の要望に応え、客好みの芸妓の派遣を「検番」へ依頼する役割が待合の担当だ。
待合は貸し座敷なので料理は出ない(だが酒は出る!)。
仕出しで料理を注文することは可能であったそうだが、もちろん特別価格になる。
だったら何かしら腹に入れてから遊びに行った方が得じゃね?と思ってしまう訳だが、
そんな野暮な男は芸妓たちから軽蔑されるに違いない。
非公認で売春が行われていた待合も存在していた。
そのような店には、男女が熱い一夜を過ごすための寝具が備わっていた。

一方、自前の板前を雇用して料理を客へ出していたのが「料理屋」
こちらは待合と比べて高級店という印象。
絢爛なお座敷遊びの場としてイメージしやすいのは料理屋の方だろう。
いわゆる”料亭”というやつだ。
某M崎アニメ映画の一作品は、料理屋をコミカル・ポップに描いている。
幼子を金銭で釣ろうとしているカオナシは富裕層の男性を揶揄しているのだろう。
金を手にした男は今も昔も下衆である。

平井に現存している料理店と料亭(現在は普通の料理屋として営業している)。
東京都公安委員会から交付されたことを示す鑑札が掲示されている。
料理店の許可を公安委員会が与えていたという滑稽な時代の残骸を楽しめる。

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「検番」
置屋で待機している芸妓を客が待つ場へ取り次ぐ役割である。
待合や料理屋は芸妓のデリバリーを置屋へ直接依頼することはしない。
検番を通じて置屋から芸妓をデリバリーしてもらうのだ。
…なんだかややこしい。
しかし、これは花街を管理するための一環であったらしい。
特定の置屋と待合・料理屋における癒着を防ぐには、管理を複雑化することが望ましかったようだ。

また、客からの花代・玉代は芸妓へ直接支払われない。
待合や料理屋の手に花代・玉大が一時的に渡り、検番がそれを後日徴収する。
徴収した額から経費などを差し引いた額を検番が置屋へ支払うのである。
そして置屋の取り分を差し引いた額が芸妓へ支払われる…と言いたいところだが、
芸妓の多くは債務者であったため、賃金を手に出来るものは少なかったと言われている。
こりゃかなしすぎるな。

待合への仕出し手配、トラブル対策、芸妓の送迎なども検番が請け負っていた。
デリヘルで例えるならば電話対応や備品調達、ドライバー采配などを担当する部署が検番である。
総務と経理を包括したような部署だと思えば想像しやすい。

 

花街と株券

ざっと三業の業務内容・金の流れを説明してみた。
しかし、興味深いのはここから先の話である。
時は昭和、先進的な考えを持つ花街は”株式会社”を設立することに目を付けた。
三業それぞれが独立した株式会社を設立。株券発行によって資金を調達し始めたのだ。
以下は”株式会社住吉藝妓検番”が発行した株券である。
昭和15年発行、1株50円。
現在の価格に換算すると単元は17~20万円。
株主かつ代表取締役の木下常吉氏、彼の名をググると…..
これ以上はやめておこう。

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株式会社住吉藝妓“が発行した株券も確認されている。
こちらは検番ではなく置屋が発行したものではないかと思われる。
1株500円。現在の価格に換算して単元は170~200万円。
花街の景気がいかに勢いづいていたかを認識させられる。

世の中広しといえども、株式会社を設立していた水商売・売春業者が過去に存在していたのは日本だけではないだろうか。
当時の日本の性と娯楽、金に関する特異さ面白さに興味が尽きない。

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