映画チラシの地層学①

“映画チラシ”とは、そう映画館に行くとロビーに置かれている上映予定の映画宣伝のための宣材紙(チラシもしくはフライヤー)のことである。

その”映画チラシ収集”の話をしていこうと思う。

 

とりあえずは、その歴史を紹介する。

戦前から戦後1950年代くらいまでは、映画チラシの紙質は、わら半紙のような材質であった。

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そして、60年代後半までに印刷もカラーになり、サイズも宣伝画像をなるべく大きく、でも邪魔にならずに持って帰りやすいB5サイズという今では定番の大きさの”映チラシが出来上がった。

そして70年代、映画チラシがデザイン的に魅了し、保存しておきたいというこの”紙”の魅力が熟し、”映画チラシ”ブームが、主に若者や子供対象にやってくる。

ブームに火が点いた映画チラシは、古本屋や、もしくは専門の映画チラシ店舗や、通販などで売られるようになった。

当時、最新の上映映画のチラシはすぐに手に入るため安く、100円くらいで、昔の有名な人気映画とかは数千円から数万円まで、ピンキリであった。

そしてチラシマニアは、自分の好きな映画や、好きな俳優、推しのシリーズ映画等々、各々のコダワリでチラシを集めたり、チラシ仲間と交換したりなどするようになった。

ある意味、昔の子供がやっていた”面子(メンコ)”、今の子でいえば”ポケモンカード”に近いところもあるかもしれない。チラシに勝ち負けのゲーム要素はないものの、チラシは宝モノとしてコレクトされ、相手に自慢し、ときにはトレードするモノとなった。

そして、ブームは80年代に勢いを増す。

70年代~80年代にかけて、流行していた映画である「007」シリーズ、「水拳」「笑拳」などのジャッキー・チェンの出演映画シリーズ、「スターウォーズ」シリーズなどの映画チラシが人気を博していた。

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今とちがって、インターネットもパソコンもなかった時代なので、子供のメディアとしての娯楽は、テレビ、漫画、と並ぶくらいに劇場映画があった時代なので、映画チラシは映画マニア、特に若者や子供の層に人気を博していた。

そして、その頃「スクリーン」や「ロードショー」といった、洋画中心とし、海外の人気俳優をグラビアモデルのように紹介するポップな映画雑誌が台頭してくる。それらの雑誌が付録として、映画チラシの印刷セット、たとえば「007」の最新の作品までのシリーズセットなどを付けていた。ちなみに、それらのチラシはあくまで付録のために印刷されたものであり、本物のチラシではない。それゆえ、映画館に置かれると印字されるはずの映画館名がなかったり、細かい字の部分がインクの滲みが出ていたりしていた。

そして、90年代に入ると、徐々に映画チラシブームは、下火になっていき、2000年代からは、ブームはなくなったといえるだろう。

時に、インターネットやパソコンが普及し、ゲームやネット動画といった新たなメディア文化が花開いていき、同時に足を運んでみる劇場映画の文化は下火になり、必然的に映画チラシのブームも無くなるわけだ。

しかし、ブームはなくなったとしても、映画チラシ愛好家は少数ながらも存続し、チラシ探しはもっぱらヤフオクなどのネットで簡単に検索でき、外へ探しに出かける手間もなくなった。また個人で所有するチラシをネットで売る人も増え、ブームは過ぎたとて、マニア的にチラシの売買が格段としやすくなっている。

 

つづく

 

 

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